ライフ・イズ・カルアミルク

本当のライフハックを教えてやる

株式会社を退職しませんでした。

退職しませんでした。はっは。*1

顛末を書きます。

 

【ここまでのおさらい】

先週のエントリ「株式会社を退職しました」

http://johnetsu.hatenablog.jp/entry/2013/06/07/235046

 

…というわけで人事部長にも退職の意を告げ、残された業務は退職するその日まで、春に咲くたんぽぽのようにじっと寒さを耐えるのみ、だったはずが、突然社長に呼ばれ、会議室で2時間近く語りあってしまったさらにその翌日、ともに酒を飲み、やわらかい肉を食べ、人生について語り明かす流れになりました。

すげえ展開。

***

で、肉を焼きながら、3時間くらいかな、社長とお話した。彼(以降、社長のことは『彼』と書く)も俺と同じで営業からスタートし、2年目で弊社を見限ろうとしたらしい。で今回、営業部の新人が退職すると報せを受け、居てもたってもいられなくなった。で、話してみると案の定気が合ってしまい、ジョッキ片手に「頭のいいやつほどさっさと会社を出てくんだ」みたいなことを言うもんだから、俺もテンションが上がって「そうなんですよ!3年やらないとわからない、なんて上司は言いますけど、俺は頭がいいから1年でわかった」と調子に乗って相づちを打つ、みたいなそんな感じで。肉は本当においしかった。いくつか焦がした。

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酒の入った社長はトークが止まらず、後半はほぼ9割向こうがしゃべってたけど、こちらは気を遣わずに楽しく話せた。

俺が会社でしんどいのは、職場の上司らのことをまったく偉いとも何とも思えなくて、そのくせ根がまじめだから「『上司らは偉いんだ…上司らは偉いんだ…』と自分に言い聞かせつつ、敬ってるフリをしながら上司らと話す」をずっとやり続けていたからで、ウソがつけない人間には、これがしんどい。本当にしんどい。その場限りのウソをつくのはまだしも、ウソはつきとおすことが難しいので、絶対にボロが出る。うっかり上司にタメ口が出ちゃうとか。「は、何言ってるんですか?」って素でつっこんだりとか。これはもう、仕方ないですね。努力でどうにかなる問題ではない。人生は、ポケモンのレベル上げじゃないんだ。

 

しかし上司と違って、彼(=社長)は「ただただおもしろい人だなあ…」と素直に思えて話すのが楽だった。これくらい器が大きい人には俺ごときが何話したって平気だろう、と思うし、そうすると俄然、ことばが乗ってくる。自分にブレーキをかけなくていいというのは、よいですね。精神衛生上。そうか、これが「社長の器」か。器の大きな人間にならないとダメだ。社長になろう。俺も。がっちりマンデー出よう。がっちりマンデーに出よう。そう思いました。

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話したことは書ききれないけど、俺から話したことを書くと…

 

「自分がこうしていま生きてるのは、何かの間違いとしか思えない」

 

宮古島の海に浮かんでいたとき感じたような、ただそこに在るだけで満たされる感じがこの街にはない」

 

「朝起きたら体が重く、動かなくなっていて、これはヤバいと思ってガバっと冷蔵庫を開けて缶ビール500mlを1本開けて、出社不可能な状況に自分を追い込んで、『体調悪いんで会社休みます…』って上司に連絡を入れて、そのまま赤羽の立ち飲み屋を朝からハシゴしたのが、先週の水曜」

 

等々しょうもない話をして、会社の人間ではじめてこういう話をできたのが社長、というのが、人生わからないですね。相手がえらい、VIPだからって遠慮して本音を出さないほうが逆に失礼かなと思ったし、本音で話してくれる人なんて少ないからきっと社長も寂しいのだろうし、俺なんて辞めてもともと*2だから、気が楽だった。で、気が楽だと俺は会話のスケールがどんどんデカくなってしまう。

 

社長「お前はなにか、やりたいことはあるのか」

俺「世界を良くしたいです」

 

これがめちゃくちゃウケた。こういうのはウソじゃないから、スラっと出てくるんですね。あまりにもスラっと言うもんだからウケたんだと思う。あー、就活でもこれ言えばよかったのかな…。

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さて。

社長が話してくれた丸珍エピソード、仕事および経営に対する哲学、会社の裏事情、などをここに書くと、コンプライアンス(っていうんですか?)に引っかかると思うので書きません。社長にブログバレたら恥ずかしいし。

退職を考えなおす決定的な要因となった社長のことばが特にあるわけではないのだけど、社長のぐるぐる同じところを回り続けるような話は一貫して

 

「流されろ」

 

というテーマのまわりを巡っていたと思う。つまり「会社の流れ、世の中の流れ、宇宙の流れに、しっかり自分の身を置いて考えてみろ」という趣旨では、なかっただろうか(なかっただろうか、って俺しか知らねえんだけど)。

いやこのフレーズだけ切り取れば「てめえは流されろ。社畜になれ」だと誤解されかねないけどそうではなくて「お前は今まで、自分のやりかたで何でもやってきたから、流れに身を任せる、ということをしてこなかった。だからそれが怖いんだ。一度流されてみれば、意外と自由に泳げるものだし、そこでつかめるものは必ずある」という話なのだと思う(たぶん)。

 

たしかに俺は、自分の取るべきポジションなり人間関係が安定してくるたび、定期的にご破算にしないと気が落ち着かない、社会的動物としてNGなところがあって、そうやって無理やり流れからはみ出そうとする俺の社会不適合な面を見抜いて心配してくれたんだろうなと思う。見抜いてというか、俺の方からカミングアウトしてるんで世話ないですけど。

まあ今の流れからはみ出してみて、別の流れに身を置くという選択をしたところで、流れに乗ること自体が無理だったら結局同じなわけで、社長の言うことは確かにな、と思った。「お前は無理をしすぎてるんだ」とも言われた。「野たれ死ぬな」と言われた。〆のビビンバがおいしかった。

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俺があまりに認識が雑だから、相手が何を言ってるのかだんだん自信なくなってくる。

「流れに任せろ」「ホームを持て」「型を大切にしろ」「自分のスタイルを持て」「ルーチンだ」「縁だ」「バイオリズムだ」と社長の話はこのへんのキーワードを巡りつつ、遠いようで近い、どこか同じような話を繰り返していて、きっとこれは全部同じ事を言ってるんだろうな、と思う。

つまりは会社の流れ、世界の流れ、宇宙の流れ、それら大いなる流れの中に、人間は独りぽつんと浮かんでおり、その人間の中にもまた、生命が流れ、小さな宇宙が存在する。そうした森羅万象と自分を貫く流れを調和させ、自然のように生きよ。流水の如く生きよ。宇宙と一体化せよ。

…ざっくり言えばそういうメッセージを伝えているのだと、俺は解釈しました。社長の真の意図など知ったことではないけど、俺はそう解釈することにした(なお社長は一言も「宇宙」などと言っていません)。

が、社長の社長らしからぬ謙虚な話しぶりの中には、なんというか人間は流れに身をゆだねるしかできないちっぽけな存在である、という悟りあるいは覚悟、みたいなものをガッツンガッツン感じて、だから俺の言うこともそんな間違ってないと思うんですよ。ざっくり言えば、だいたいそういうことを言いたかったんだと思う。人間はちっぽけなんだぜ、って。

 ***

…とまあこうして、めったに話せない社長と腹を割って話せたのも、めったに食べられない高級な肉を食べたのも、「流れ」が俺に来てるってことなのかな、と思い「とりあえず流されてみよう」と、とりあえずの結論を出したわけであります。

というわけで、俺は退職を踏みとどまってしまいました。退職を期待された方、申し訳ありません。これは俺の意志じゃない。宇宙の意志なんだ…。

***

何を言ってるんだか、自分でもわからなくなってきました。

もうちょっと続きます。翌日。

出社してみると、なんか世界が、明るいんですね。

不思議だなあ、と思ったのだけど、この一連のイベントはきっと、俺にとって一種の通過儀礼だったのだ。「会社抜けます」と同期、上司、家族、フォロワー、その他いろいろな人に言い散らかして、一時的に会社の枠の外に出て、再び帰ってきた。村を飛び出して帰ってきたメロスを彷彿とさせる、スッキリした顔立ちになってたと思います、俺。

 

で、通過儀礼を終えた男性に特有のスッキリした顔で上司(直属)に話しかけるわけですよ。

「僕ですね、会社やめますってみなさんにひと通り話したらね、今日、肩がすごく軽いんですよ!」って、上司にニコニコ話したら(こいつは何を言ってるんだ…?)みたいな目で見られてしまい、(やっぱりこういう話はダメなのか…?)と思いつつ、「やー、すいませんが、退職、もう一度考えさせてください!」とまたニコニコしながら言ってしまって(こいつは何を言ってるんだ…?)みたいな目で見られてしまった。

(生きていること自体が申し訳ない…)と日々を謙虚に過ごしているのに「申し訳なさそうなフリをする」がこの世でいちばん苦手なの、どういうことなんでしょうね。人間はうまくいかないな。

 

いずれにせよこの瞬間、俺はまた会社の歯車として再スタートすることとなりました。退職、1週間で取り消しです。はっは。

***

夕刻。「情熱くん、ちょっと…」と部長に呼ばれ会議室へ。

 

部長「退職、考えなおしたんだって?」

俺「あ、はい」

部長「俺もそれがいいと思う。で、7月1日から部署変わってもらうから」

俺「え」

部長「異動発表もすぐ出る。頑張れよ」

 

マジか。

話が早すぎると思ったら、どうも社長が俺の異動について話を通してくれたらしく、万事あれば九千九百九十九事は致命的に決定が遅い、伝統的なビッグ・カンパニーたる弊社において、社長の判断だけは驚くほどはやかった。はじめて俺と会話した次の日には焼肉で、次の日には異動で、新しい部署も決まって…。このスピード感。これぞ本物のビジネス。俺も社長になろう。がっちりマンデーに出よう。カンブリア宮殿にも出よう。そう思いました。

***

で、新しい部署について。

詳しいことはコンプライアンス(って言うんですか?)に引っかかるので、言えないんですけど、最近できたばかりの若い部署、というかプロジェクトチームで、やることもまだ固まってないらしい。部署・部門間を横断して様々な問題を解決しようという、トリックスター的な部署、って言えば聞こえはいいのかな。そこの上司に話を聞いたら「やること?特に決まってないなあ…」って言ってた(ちょっと笑った)。

まあこういうヤクザ的な場所に置かれるほど本気を出したくなるのが俺のあまのじゃくなところで、さっそくAmazonでドラッカー名著集をポチりました。

俺はこの会社にイノベーションを起こす。ここから世界を少しずつ良くする。「もしも入社2年目で挫折したアルファツイッタラーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」…? 1年後、いったいどうなるか。まだ会社にいるのか。どうぞご期待ください…。

***

というわけで、しつこいですが、またサラリーマンします。

社長曰く「半年後、1年後にお前が辞めようと俺は一向にかまわん。ただもう一回だけやってみろ」だそうで、本当に半年後、1年後やめるかもしれません。

自分で読み返して思うけど、こういう文章書いてる人間が、まともな会社組織で何年もつか、わかったもんじゃない。まあ半年経ったらまた考えりゃいいか、と思いつつ、とりあえず今は、社長のことばを信じてもいいかな、と思った。ので、もうちょっとサラリーを稼ぎます*3

 

実際の問題として、会社やめて大学院に行こうと思ってたけど、別にそんな勉強してたわけでもなく「会社やめて追い込まれないと、俺は本気を出さないんじゃねえかなあ…」くらいにしか考えてなく、大学受験に2度も失敗した件をまったく反省しておらず、自分でもバカじゃねえかと思うけど、そういう生き方しかしてこなかったので、ここいらで冷静に大人の言うことを聞いて、ちょっと反省しようかな、という気にもなりました。まあ無理かもしんないんですけど、やります。やってみせます。社長になってみせますわ。

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退職を期待された方。

申し訳ありません。

私は社長になります。

これからもますます、未来の社長として邁進して参りますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。プレジデントピース。

 

*1:石を投げないで!

*2:辞めもと

*3:こういう事情、上司にどう説明したらいいのか、いまだにわからない