美しくない世界で戦争がはじまる
「ああ、戦争ははじまるな…」と思ってしまった。
某所でたまたま見つけたバナー広告なのだけど、このデザインはどうだろう。
「シリア緊急事態」「今世紀最悪の惨状!」「今すぐ募金する⇒」
…なんというか、あまりにも安いデザインだと思う。安易だし、安っぽい。俺が言うのもなんだけど。
ウィルス対策ソフトや教材商法のバナー広告からおもしろみを引いたらチープさだけが残ってしまいましたという印象で「この機会を絶対に逃すな!」みたいなネット広告のノリを持ち込むにしても、ここには何の屈託もなさすぎるんじゃないか。
別にUNCHRがナンボのもんかは知らないし、この広告に何かを代表させる気なんてさらさらないけれど、しかしもしこういうデザインで世界が覆い尽くされるとしたら、あるいは現に覆い尽くされつつあるとしたら、そりゃ戦争だって起こるよなと思う。だって、ここにどんなリアリティを感じろというのか。
20年前の湾岸戦争、リアルタイムで放映されたミサイルの空爆映像はあまりにも非現実的で、「ニンテンドー・ウォー」なんて呼ばれもしたけれど、いまや戦争なんてファミコン程度のリアリティも持ちえないのかもしれない。
いい加減見飽きたバナー広告と同じ程度にはうんざりするようなリアリティの中で戦争ははじまり、いつもと風景が変わったことになんとなく気づいても何も見なかったことにして、いつものようにただボーっと口を開けたまま画面をスライド、視界から消える。
「こんなものを子どもに見せるなんて問題だ!」と戦争の悲惨を描いた昔の漫画は大人の手で視界から隠され、そうして子どもは、自分のスマートフォンで「何の問題もない」この広告を指一本で読み飛ばして戦争を知った気になる。 毎日毎日うっとうしい現実を見せられ「こんなもの消えればいいのに」と、85円の有料版を買えば消えるくらいのノリで、思う。
次の戦争は「iwar」なんてどうだろう。
どうだろうな。