読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ライフ・イズ・カルアミルク

本当のライフハックを教えてやる

上司の前で innocent world を熱唱した話

やらかした話をします。けっこう前の話なんだけど。

 

先日、営業部の先輩諸氏とのたのしい懇親会に参加しまして、それはそれで問題が勃発してたんですけど、それはともかく、生きて一次会を終えまして、二次会は上司5人と場末のスナックへ繰り出した。一番若い人で40代後半、俺の倍以上生きてる方々と楽しい二次会です(しかしスナックって楽しいか…?カタカナ4字ならパワプロのほうが楽しいんじゃないのか…?)

昨今のゆとり大学生は知らないかもしれないけど、スナックって歌える場所なんですよね。ママや若い娘もいるし、鏡月のボトルとロックアイスも置いてあるんですけど、カラオケセットも置いてある。客は俺たち以外いなかったんで、さっそく若手から歌うことになる。俺もスナックに行ったことが2回あるからわかる。「おい情熱、歌えよ!」ってその日もトップバッターに指名されまして、まあそうなるわな、ってマイクを握って、そこまではよかったんですよ。よかったのはそこまでです(逆に言ってみました)。

 

しかし俺もだてに営業やってない。接待スキル、ゼロなわけじゃない。こういうときの戦略(ストラテジー)は決まっていて、寺尾聡「ルビーの指環」とか梅沢富美男「夢芝居」とか、おっさんウケする昭和の名曲を歌う。俺は見た目が赤ちゃんなんですけど、キーが低い、いい大人が歌う激シブな曲を赤ちゃんが歌いだしたら、そこはウケるじゃないですか。座があったかい気持ちになるじゃないですか。最高の営業マンなんですよね。なんで営業から逃げ出したんだろうな。 

まあ赤ちゃんがスーツ着て社内をうろちょろしてるだけで爆笑ものだと思うんですけど、それはともかく、今回のカラオケも件の戦略(ストラテジー)で乗り切ろうとした。ら、上司A(若手のエース・40代後半)が俺にフリをよこしてきやがったんです。「情熱くん、ミスチル歌わないの?」。

 

そのすこし前、出張で先輩の車に乗せてもらったんですよ。カーステからはミスチルのベストアルバムがリピートで流れていた。たぶんミスチルが好きか、好きじゃないけど無難だから流してるのか、ミスチルの誰かに恨みを抱いていて怨恨を堅持すべく延々とリピートしてるかどれかだと思うんですけど、そこから音楽の話になって、俺が大学時代、軽音サークルでギター&ボーカル務めてたことを話した(メンバーとそりが合わなくて3ヶ月で脱けたことは言わなかった)。したら先輩が「じゃあミスチルなんかも歌えるんだな」と聞いてきたんで「歌えます歌えます!昔やったな~、懐かしい…」とか言うじゃないですか。まあFのコードが押さえられない時点でありえないんですけど、そういうことです。

 

で、スナックに話を戻すと、件の先輩(40代後半)はミスチルの件をおぼえていた。で、ふられたら歌うしかないじゃないですか。先輩にそこまで言われたらね、歌うしかねえですわ、って意気揚々と「innocent world」を選曲、送信ボタンを押す。

で、問題なのは、実は俺が全くミスチル歌えないこと、とかではなくて全く逆。歌えることなんですよ。

そもそもまず地声が高い。体格が赤ちゃんですから、声帯も短い(ファラオの呪いか何かだと思うんですけど)。で、俺の生い立ちに何の興味もない方には申し訳ないんですが、声が赤ちゃんなことに加えて、滑舌が終わってることもコンプレックスであった。だから大学時代、バンドやる前は自宅でボイストレーニングをやってたんですね。ファラオのせいにしちゃいけない、自助努力で何とかしよう。何が「今年の漢字は”輪”」じゃい、と。だから大学の前半2年は、それとバイトとアマガミと呼吸しかしてない。

 

そもそも俺は人前でやたらあがって、緊張すると声が出なくなってヤバい、という弱点を重々把握してまして、このままいけば就活で詰むのは確定的に明らか。だが逆にちゃんと声が出さえすれば、緊張せず勢いで話せるんじゃないか。そこに活路を見出した。発声練習は生きていく術だと思って頑張った。イケボのゲーム実況者になって女を抱いてやろうと思った。しゃべりが下手すぎて挫折した。そっと動画を消した。その下積みの甲斐あって、今や立派に声が騒音レベルなんですけど、何の話だっけ。

***

スナックに戻ります。暗黒の大学時代を経た俺は、何の因果かミスチルも歌える。

悪いことにその日、俺ののどは絶好調だった。高い音も余裕で出せるぜ。俺の声帯がそう言ってた(ボイストレーニングをすると、声帯と会話できるようになります)。

で、旧型DAMのショボい音質でイントロが流れてきますよね。サビまではよかった(と思う。忘れた)。問題はサビ。「いつの日もこの~胸に~」から、急に音が上がるところ。なぜ急に音が上がるかというと、サビとはそういうもので、ミスチルもそういう作曲をしたからですが、ここからどう展開したか。

 

・サビ入るじゃないですか

・「バーン!」って声が出るじゃないですか

・「シーン…」ってしてるんだよな

 

1番を歌い終え、アルコールで右半球しか脳が回ってない俺にもピンときた。「これたぶん、がんばって歌っちゃいけないやつだったな…」と。やっべ、軌道修正しなきゃと思って、俺の脳内コンピューター(右)が空気を察知した結果、2番は力を抜いて、へろへろになって歌ったんですけど、時すでに遅し。というかヘタに取り繕うくらいならちゃんと歌いきる方がマシだったと思いますが、どっちにしろ動揺しててまともに歌えなかったろうな。ラストのサビはどうしたか覚えてない。あとは野となれ山となれ状態だったと思います。円滑なコミュニケ―ションのために鍛えたボイス、裏目に出た。

それで歌い終わって、アウトロが終わって、何にも反応がなく、静かである。まあそうだわなと納得して、万策尽きたとあきらめて、寝ました(!)こいつ寝たらしいぞ。いや寝たことは覚えてるんですけど、どういう経緯で寝るに至ったか覚えてない。「もう寝ろ」って天の声が聞こえたんだと思う。気づいたら脳が閉店して寝てた。

…で、1時間くらいして起こされて、電車に揺られて家に帰って寝て、目が覚めて、うわって後悔する。後悔がじわじわ来るのはいつものことなんですけど。で、反省した結果、その日は昼から近所のカラオケボックスに出向しました。しらふでもヘタクソに歌う練習をした。どういう方向にクソ真面目なんだ。

***

でこの件、半年前なんですよ。勘のいい方はおわかりだろうけど、俺がやめるやめる詐欺(2年目前半の若手社員に特有のツッパリで上司の額に退職願を突きつけたものの、社長に高い肉を食わされて心が揺らぎ、「やっぱやめるのやめます」と言って撤回、会社への残留および異動が決まった一連の茶番。詳しくはこちら「株式会社を退職しませんでした」

http://johnetsu.hatenablog.jp/entry/2013/06/21/212719)を起こして、社内を騒然とさせた、ちょうどその直後です。翌週だったな。

で、そのタイミングで飲み会に参加する、となれば考えることは一つじゃないですか。「俺のせいで場の雰囲気が暗くなる、そんなことがあってはいけない」と。俺はめちゃくちゃ空気を読みますからね。そうすれば当然

 

・できうる限り、ニコニコ明るく話さなければならぬ

・ニコニコ話すためにテンション上げよう!

・テンション上げるために前もって酒も入れよう!

 

の三段論法が立つのは当然で、事前にちょっと酒入れて、今までの飲み会よりテンション上げていこうと思った。三段論法に謝った方がいいですね。

ところで弊社のオフィス、小鳥たちがのどかに暮らす森のように静かですから、彼らの眠りを起こさないよう静かに話すスキルを身に着けてるんですよ、俺は。普段は森の奥深くでつつましく暮らす、朴訥な木こりのようにおとなしいんですけど、根が田舎者だから、街へ繰り出すと急にボリューム上がる。その日も一次会の段階でかなりうるさかったかもしれない。隅っこのほうに座ってたら、上司の1人(くにおくんもびっくりの硬派)が俺の隣に来て、ぼそっと言うんですよね、「もうちょっと申し訳なさそうにしろよ…」って。びっくりしたな。

 

だがしかしその上司も怒ってるわけじゃなくて、「勘弁してくれよ(とほほ)」という顔をしていた。しているように見えた。で、俺も性格が終わってるので、人が困ってる姿を見ると、つい笑ってしまう癖があるんですね。あろうことか上司の顔を見てたら楽しくなってしまって「ええ!?あ~いや!本当にすみません!」って、へらへら笑いながら誤ってしまった。(今思ったんだけど、こういうことしてるときが一番たのしいな)

それで硬派な上司の顔がますますトホホって感じになってしまったところまでは、覚えてるんだよな。まあカラオケの件よりこっちのがどうなんだと思いますけど、そのノリを引きずった結果が、innocent world ですね。後日、しまったなあ…と思いつつ、まあしょうがねえかって笑うしかない。そんな感じで、生まれてから25年間、俺はそんなことばかりしている…

***

なんでこの話をしたかというと来週、前回とほぼ同じメンツで飲むらしいんですよね。営業部の忘年会。半年ぶりに顔を合わせるんですけど、どういう顔をすればいいかわからないの。

とにかく同じ失敗だけは繰り返すまい、とは思うんですよ。頭では。でも論理的・合理的に考えると、忘年会に誘ってもらえたってことは、そこまで深刻に嫌われてるわけじゃねえよな、というか失敗なんて俺が思ってるだけじゃないか、とも思えるわけですよね。だからまあ、根っこのところで反省してない。「失敗にしても、割とかわいい失敗だよな…」と思ってる。「リーマンショックとか地球温暖化に比べたら全然平気だ…」と思ってる。思ってるからダメなんでしょうね。

 

いや実際、まったくたいしたことない失敗だと思うんですよ。ただ、様々なファクターを総合・勘案すれば、このような事態は未然に防げたんじゃないか。ベテラン営業マン特有の自意識、平時の俺の行い、および声のdB値、埼玉のホステスのレベル、忘れられた大和魂、金星の運行…。そうした要素を懸念したとき、やはり取るべき対策があったのではないか。冷静に対処すれば万事よかったのではないか。そのような反省的自己意識が、絶えず私を苦しめ、あの一件について「失敗だった」と結論を下しめるのです。生まれてすみません。
まあでも、本当にたいした失敗じゃない。たいしたほうの失敗は、こんなところに書けないやつだから…

***

まあ今回も忘年会、行くんですけど。だまってニコニコしてようかな。あちらの世界へ飛んでしまった、出家の儀を済ませたあとの小坊主みたく、悟り顔で座禅でも組んでいよう。そしたら仏様と勘違いされて、拝んでもらえるかもしれないし…

 

半年ぶりに会ったゆとり社員が、さとり社員に変わっていた、というオチでした。おしまい(人生にオチはない)。